SWITCH関数は、Excelにおける条件分岐を簡素化する機能である。2016年に追加されたこの関数は、IFやXLOOKUPといった従来の関数に代わるシンプルな選択肢として注目を集めている。この関数の特徴は、評価する式を一度だけ指定し、それに対応する複数の値と結果を組み合わせて記述できる点だ。これにより、複雑なネストが不要になり、可読性が向上する。一方で、SWITCHは厳密な一致しか認識できないため、多くの条件がある場合や曖昧な検索には不向きである。

SWITCH関数の基本構造と使い方

SWITCH関数は、指定された値がいずれかの条件に一致するかを評価し、該当する結果を返す関数である。IF関数のように複雑なネストを避け、簡潔な条件分岐を記述できる点が特徴である。基本構造は=SWITCH(式, 値1, 結果1, 値2, 結果2, …, デフォルト結果)の形で書かれる。この関数のポイントは、最初に評価する式(expression)を指定し、その後に複数の条件と対応する結果をセットで並べることだ。

式に一致する最初の条件が見つかると、その結果が返される。対応する条件がない場合は、最後に指定したデフォルト結果を返す。Excel 2016以降のバージョンで利用でき、従来のネスト型IFを使った複雑な条件分岐よりも明快である。ただし、SWITCHは完全一致のみを評価対象とするため、数値範囲などの曖昧な条件には向かない。

IFやIFSと比較した際のメリット

SWITCH関数の最大の利点は、評価する式を一度だけ記述すればよい点にある。IFやIFSでは、条件ごとに同じ式を繰り返す必要があるため、冗長な記述が生じやすい。一方、SWITCHでは式を一度宣言するだけで、複数の条件と結果のセットをまとめて扱える。

また、SWITCHは読みやすさにも優れている。IFを多重でネストするとかっこが増え、視覚的にも混乱を招くが、SWITCHならば一対のかっこで済むため、エラーの原因を特定しやすくなる。さらに、条件と結果が一つの構造にまとまっているため、データの整理もしやすい。ただし、IFやIFSと比べた際の柔軟性には限りがあり、複雑な計算や不完全一致の条件評価はSWITCHには不向きである。使用シーンを見極めることが重要となる。

実務に役立つSWITCHの活用例

SWITCHは、例えば学生の成績に応じた進級判定など、複数の選択肢から一つを返す場面で効果的に活用できる。成績が「A」なら「次のレベルに進む」、「B」なら「同じレベルに留まる」、「C」なら「前のレベルに戻る」というように、条件をシンプルに記述できる。実際には、以下のような式で運用できる:=SWITCH([@Grade],”A”,”次のレベルに進む”,”B”,”同じレベルに留まる”,”C”,”前のレベルに戻る”,”成績の確認が必要”)。このように、データの各条件に対応する結果を一つの関数内で完結させることが可能である。

また、SWITCH関数は自動で表全体に反映されるため、表の構造が変わっても柔軟に対応できる。XLOOKUPなどの関数と比べても、データが他の表に分散せず、操作が直感的で整理された状態を保てる点も実務での利便性を高めている。

SWITCHの限界と注意点

SWITCH関数は便利な一方で、いくつかの限界が存在する。まず、完全一致のみを評価対象とするため、「>」「<」といった比較演算子を使用できない。このため、数値範囲を条件に含めたい場合には、IFやIFSのほうが適している。さらに、条件と結果の組み合わせが多くなると、SWITCHの記述が長くなり、かえって煩雑になることがある。

公式には126組の条件と結果を持てるが、実際には7〜8組程度に留めるのが現実的である。また、非数値の値を扱う場合には、クオーテーションで囲む必要があり、手入力の際に誤りが発生しやすい点にも注意が必要である。XLOOKUPのように列全体を返す柔軟性もないため、SWITCHは単一のセルごとに結果を返す用途に限定される。このように、用途に応じて他の関数との使い分けを意識することが重要である。